GPSの累積標高が 実際より多く 出るのはなぜか
ルートの累積標高は簡単に20〜40%多く出ます。その理由、樹木や休憩、気圧高度計が果たす役割、そして数字の正しい読み方を解説します。
「累積標高」が実際に測っているもの
ルートの最低地点と最高地点の差ではありません(それは単純な標高差です)。累積標高とは、ルート全体を通じたすべての登りの合計を、ひとつずつ足し合わせたものです。300 m登って100 m下り、また200 m登るルートなら、山頂が出発地点より400 mしか高くなくても、累積標高は500 mになります。
そして、ここに問題があります。これは足し算なのです。登りとして現れた測定誤差は合計に加えられ、二度と相殺されることはありません。3時間のトラックには2,000点もの記録点が含まれることがあり、それぞれの標高がノイズで数メートルずつ揺れていれば、その揺れが何百回も足し合わされます。
数字でひとこと
スマホのGPSの垂直方向の誤差は、一般に水平方向の2〜3倍です。地図上で5 mの精度で位置を示していても、高さでは10〜15 mずれていることがあります。その揺れがトラック全体で繰り返されると、累積標高は簡単に20〜40%多く出て、木々に深く覆われた場所では、さらに大きくなります。
誤差はどこから来るのか
衛星の配置
原理上の問題GPSは、見えている衛星を使った三辺測量で位置を計算します。水平方向の位置については、衛星が周囲に散らばっていて、これは好ましい状況です。ところが高さについては、衛星がすべて頭上にあるのです。足元から縦軸を絞り込む手助けをしてくれる衛星はありません。この非対称性は原理上のもので、どんなに高価なスマホでも解消できません。
樹木と谷
反射した信号うっそうとしたブナ林の中や狭い峡谷では、2つのことが同時に起きます。見える衛星が減り、見えている衛星の信号も木の幹や岩壁に反射して届くのです。反射した信号は実際より長い距離を進んでいるため、受信機は距離を長く計算し、あなたがいない場所に位置を置いてしまいます。峡谷ではトラックが片方の斜面から反対側の斜面へと「飛び」、そのたびに、存在しなかった登りが加算されていきます。
止まっていても解決しない
一歩も動いていなくてもこれは、最も知られていない原因です。静止していても、GPSは測り続けます。記録をオンにしたまま20分座って昼食をとれば、受信機は記録点を残し続け、その一つひとつに独自の高さの誤差があります。フィルターがなければ、一歩も動いていない休憩が、ルートに数十メートルの標高差を加えることもあります。
気圧高度計は優れているが、完璧ではない
アウトドア用ウォッチの多くや一部のスマホには気圧計が搭載されていて、気圧から高度を割り出します。高度の変化を測るにはGPSよりもかなり安定しているので、ウォッチのほうが信頼できる累積値を示すことが多いのです。
しかし、測っているのは高さではなく気圧です。ルートの途中で天気が変われば、気圧計はそれを標高差と解釈します。歩いている間に前線が近づいて気圧が下がると、実際には登っていない連続した登りとして記録されます。だからこそ、優れたウォッチは一定間隔でGPSを使って再校正します。それぞれの方式が、互いの弱点を補い合っているのです。
平滑化がズルではない理由(とその代償)
ほぼすべてのプラットフォームは、足し合わせる前にフィルターをかけます。一定のしきい値(一般に3〜10 m)を下回る高さの変化を、地形ではなくノイズとみなして除外するのです。
それは正しいやり方であり、同時に同じルートが2つのアプリで違う数字になる理由でもあります。どちらかが嘘をついているのではなく、それぞれが異なるしきい値を選んでいるのです。しきい値が低いとノイズが紛れ込んで累積値が跳ね上がり、高いと実際の短い急登が失われて少なめに出ます。「本当の」値は存在せず、あるのは妥協点だけです。
プラットフォーム間の本当の違いは、それを説明しているかどうかです。
Suviardではどうしているか
標高グラフに不自然な跳ねが出ないように平滑化はしますが、データを「あるべき」値に向けて補正することはしません。記録されたものを、そのまま見てほしいからです。どのルートも、ひとりの人が自分の端末で記録したトラックから生まれていて、見栄えを良くするために書き換えることはしません。
同じ理由で、各ルートのページには予想時間と実際の所要時間が並んで表示されます。予想時間は山の古典的な計算式(ネイスミスの法則と、標高差による補正)から算出し、実際の所要時間は、歩いた人が実際にかかった時間です。予想時間だけを表示すればすっきりしますが、誠実さはずっと下がります。机上では「3時間」のルートでも、地形が悪ければ5時間かかることがあるからです。
データが合わないルートを見つけたら、お知らせください。人の手で確認します。
数字の読み方:実践編
- 01同じ情報源の累積値どうしを比べる。同じアプリ、同じしきい値で測った2つのルートなら、どちらも過大に出ていても互いに比較できます。あるアプリの数字と別のアプリの数字を比べても、ほとんど何もわかりません。
- 02短いルートでの、切りのいい大きな累積値を疑う。8 kmで標高差1,000 mというルートは実在しますが、平坦な森の中なら、たいていはノイズです。
- 03長い休憩では記録を一時停止する。偽の標高差を最も多く取り除ける補正であり、完全にあなた自身の手でできる唯一の補正です。
- 04数字だけでなく、グラフを見る。平坦だとわかっている区間でノコギリ歯が続くグラフはノイズで、すっきりした坂が描かれているグラフは地形です。
- 05計画には、予想時間より実際の所要時間を頼りにする。標高差は、おおよその規模感としてだけ使いましょう。山は、楽観的なデータを許してくれません。
まとめ
累積標高は小さな差の足し算であり、足し算は誤差を打ち消すどころか増幅します。あなたのGPSが壊れているのではありません。最も苦手な軸で高さを測り、それを2,000回足し合わせているのです。測定値ではなく、幅のある推定値として扱ってください。そして、有効数字3桁で、脚注もなしに累積標高を示すプラットフォームは疑ってかかりましょう。
データの扱い方について詳しくは、Suviardについてをご覧ください。